New Open Hotels
- 名デザイナーが手掛けた昭和の古き良きラブホワンダーランドへようこそ 香芝アイネ
近年のレジャーホテルの流行は、スタイリッシュなアーバンリゾート風や、エキゾチックなアジアンリゾート風のデザインが主流。しかし、日本では高度経済成長期からバブル期にかけて、城塞風のメルヘンチックな装飾や、遊郭風のファンタジックな意匠がほどこされた過剰な世界観の、いわゆる「ラブホテル」が数多く存在した。
これらは今、「昭和の古き良き文化遺産」として改めて評価され、編集者の都築響一といった好事家の手によって写真集としてまとめられたり、サブカルやアート愛好者たちが物珍しさから訪れたりしている。そんな昭和のラブホ文化を色濃く受け継いだホテルとして界隈では有名な聖地となっているのが、奈良県香芝市にある『香芝アイネ』である。
西名阪の香芝ICを降りたところには古くからのホテル街が形成されており、中でも『香芝アイネ』は1979年に開業した最古参のホテルのひとつ。このホテルのデザインを手がけたのが、知る人ぞ知る「ラブホ界のウォルト・ディズニー」と呼ばれるデザイナー・亜美伊新(あみい・しん)だ。彼は、高度成長期から1600軒以上のホテルを手がけており、「回転式ベッド」「鏡張りの部屋」「部屋選択のパネル」といった昭和のラブホ文化を象徴する設備を最初に考案したのが、何を隠そう彼なのである。
ホテルは8月にリニューアルオープンし、きれいになった外装をはじめ、中のクロスや設備も新しいものに一新されたが、部屋の基本的なデザインは従来の“亜美伊新イズム”がそのまま残されている。18室ある部屋はどれも独創的でクリエイティビティにあふれているが、中でも「227」は、部屋の中央に大きな橋が架けられ、奥のベッドへと続いている豪奢な和室。なんと実際に神社などを手がける宮大工が作ったそうで、殿様が花魁と遊ぶ部屋をイメージしているとか。また、「231」は亜美伊新の作風を代表する、鏡張り&円形の回転式ベッドを備えた部屋。回転ベッドは当時のものを今もメンテナンスを繰り返して使っているレトロな設備だ。他にも、瓦屋根の屋敷を模した「228」、ハローキティのアイテムで揃えた「230」、宇宙空間をイメージした「213」など、個性的な造りの部屋は圧巻の一言に尽きる。
一部屋1000万円以下の設計デザインは請け負わないと言われるほどバブリーでゴージャスな亜美伊新デザイン。しかし、休憩1.5時間なら2,040円、19時から翌14時の宿泊でも5,410円というリーズナブルな値段で利用できるのは、競争の激しいホテル街ならでは。濃密な異空間の空気を求めて、テレビで取り上げられる機会も多いこのホテル。年配者はノスタルジーを、若者は新鮮な驚きを味わうために、現代に残されたこの「昭和のラブホワンダーランド」訪れてみてはいかがだろうか。
GALLERY
- DATA
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香芝アイネ
アクセス:西名阪自動車道の香芝ICより車で3分
住所:奈良県香芝市平野1142-2
TEL:0745-76-7312 詳しい情報はこちら